ソフトウェア開発において、必ずしもCTOやアーキテクトといった明確なポジションにいなくても、「アーキテクチャ戦略の必要性」を感じ、考える機会がある。
本記事では、こうした問いに応えるためにアーキテクチャ戦略の必要性と活用方法を整理する。
「あれ?これは一体どういう戦略で実行されている計画なんだっけ?」「そもそも戦略とはなんだろうか?」と感じたときが偶にある。
そういったときは抽象的な思考が頭の中を巡るのだが、それをちゃんと言語化できなかったので、考えを整理すべき、自分なりに勉強して内容をまとめてみた。
私はCTOやアーキテクトといった経験がなければ、アーキテクチャ戦略を沢山考えてきた実践的な経験も乏しいため、頭に描いた空想に過ぎないかもしれない。
というわけで何か明確に誤っていることがあればこっそり連絡してもらえると嬉しい。
アーキテクチャ戦略を語る前に、まず「アーキテクチャ」や「戦略」という言葉を整理してみる。ソフトウェア開発の現場ではしばしば使われる概念だが、意外と曖昧だったり、人によって認識が異なったりする。
本記事では以下の流れで概説する。
ソフトウェア開発における「アーキテクチャ」とは、システム全体の構造や設計方針を指す。具体的には、以下のような要素が含まれる。
これらの要素は一例であり、網羅しているわけではない。
アーキテクチャ(Architecture) は、設計(Design) よりも上位の概念であり、「システムの大枠」や「設計の方針」を示すものだ。その指針に基づいて、個々のモジュールやクラス、データモデルなどを具体化する段階が「設計(Design)」である。
戦略(Strategy)とは、目標を達成するための大きな方向性や計画を指す。戦術(Tactics)が「個別の具体的な手段」や「施策」を示すのに対して、戦略はより長期的・包括的な視点で組織やプロジェクト全体の方向性を定めるものである。
良い戦略、悪い戦略によると、戦略の良し悪しは次の通り語られている。
こうした「アーキテクチャ」と「戦略」という概念を組み合わせたのが、アーキテクチャ戦略である。すなわち、「組織やプロジェクトにおいて、システムをいかに構築・進化させるかを計画的に示すための方針や計画」と定義できる。
具体的には、以下のような要素が含まれる。
アーキテクチャ戦略を策定すると、以下のようなメリットが得られる。
良いアーキテクチャ戦略は、プロジェクトのあらゆる無駄を省き、ビジネスの達成目標に向けた効率的なリソース投下を支援する。
アーキテクチャ戦略は、チーム単位から組織全体まで、さまざまなスコープで策定・適用可能である。
スコープが広がるほど調整コストや合意形成の難易度が上がる点に注意が必要になる。
アーキテクチャ戦略の策定は「どのようなビジネス目的を、どのような技術的アプローチで実現し、どのように運用・ガバナンスしていくか」を明確にするためのプロセスである。
アーキテクチャ戦略がトップダウン、ボトムアップ、あるいはハイブリッドで策定されるべきかどうかはケースバイケースであり、組織の文化や事業状況によって異なる。
以下に、アーキテクチャ戦略の策定プロセスの一例となるステップを示す。
ここでは、簡単なサンプルとして「人事労務系SaaS」を想定したアーキテクチャ戦略の一部例を挙げる。
「大規模テナントの厳格な権限管理を実現しながら、迅速な機能拡張と運用効率を両立する」
アーキテクチャ戦略を考え、実行するうえでは、以下のようなスキルや知識が重要になる。
本記事では、アーキテクチャ戦略とは何か、その必要性や策定のプロセス、そして具体例までを紹介した。要点を振り返ると、以下の3点に集約できる。
アーキテクチャ戦略を明確にすることで、チームの方向性が揃い、長期的に見れば開発効率や品質、事業推進力が大きく向上すると考えられる。自分の担当プロダクトや組織の状況に合わせて、戦略が必要かどうかを判断し、適切なアプローチを取り入れたい。