概要
SLOの文脈でクリティカルユーザージャーニーについて知りたくなった。
クリティカルユーザージャーニーについて調べたことをまとめる。
クリティカルユーザージャーニーとは
サービスのユーザーにとって最も重要な体験や、特定の目的を達成するための主要経路を示すものである。
ユーザーが目標達成する過程で重要なタッチポイントや障害を特定することができる。
ユーザーが達成すべき目標を明確にし、タスクやサブタスクを特定する。
クリティカルユーザージャーニーの例
例1: Eコマースサイトでの購入プロセス
ユーザーの目標:
ユーザーがオンラインで特定の商品を購入すること。
タッチポイント:
商品検索・発見
- ユーザーが商品を検索バーで探す、もしくはカテゴリをブラウズする。
- レコメンドエンジンによって関連商品が表示される。
商品詳細確認
- ユーザーが商品詳細ページにアクセスし、価格、レビュー、商品の仕様を確認。
- 商品画像やビデオを閲覧する。
カートに追加
- ユーザーが気に入った商品をカートに追加する。
- カートページで購入予定の商品リストを確認。
チェックアウト
- ユーザーが決済ページに進み、配送情報や支払い方法を入力する。
- クーポンコードを使用して割引を適用する。
注文確定
- ユーザーが最終確認を行い、注文を確定する。
- 注文確認メールを受け取る。
商品受け取り
- ユーザーが商品を受け取り、問題がないか確認する。
- 必要に応じてレビューを投稿したり、カスタマーサポートに問い合わせたりする。
ペインポイント:
- 商品検索がスムーズにいかない場合や、検索結果が期待に応えない場合。
- チェックアウト時に決済方法が限られている、もしくは決済が失敗する。
- 配送が遅延する、もしくは商品に欠陥がある。
例2: サブスクリプション型サービスへの登録
ユーザーの目標:
ユーザーが音楽ストリーミングサービスに登録し、プレイリストを作成して音楽を聴くこと。
タッチポイント:
ウェブサイト訪問・登録
- ユーザーがサービスのウェブサイトにアクセスし、サービス内容を確認。
- ユーザーがアカウントを作成し、サブスクリプションプランを選択する。
アプリのダウンロード・インストール
- ユーザーがモバイルアプリをダウンロードし、インストールする。
ログイン・セットアップ
- アカウントにログインし、プロフィール設定を行う。
- 好みの音楽ジャンルやアーティストを選択する。
音楽の検索・再生
- ユーザーが好きな音楽を検索し、ストリーミング再生を開始。
- カスタムプレイリストを作成し、お気に入りの曲を追加する。
オフライン再生の設定
- ユーザーが音楽をダウンロードし、オフラインで再生できるように設定する。
ペインポイント:
- 登録プロセスが複雑で、入力情報が多すぎる。
- アプリのインターフェースが使いにくく、目的の音楽が見つからない。
- ダウンロード機能が不安定で、オフライン再生がうまくいかない。
例3: 銀行アプリでの振込
ユーザーの目標:
ユーザーが銀行アプリを使用して、指定口座に振込を行うこと。
タッチポイント:
アプリの起動・ログイン
- ユーザーが銀行アプリを起動し、セキュリティコードや指紋認証でログイン。
振込先の選択
- ユーザーが振込先を選択するか、新しい振込先情報を入力する。
振込金額の入力
確認・承認
- 振込内容を確認し、振込を承認する(ワンタイムパスワードなどを使用)。
- 振込完了の通知を受け取る。
ペインポイント:
- ログインプロセスが煩雑で、認証が失敗する。
- 振込先情報の入力が誤っている場合、エラーメッセージが不明瞭。
- 振込がリアルタイムで反映されない。
クリティカルユーザージャーニーとSLO
クリティカルユーザージャーニーは信頼性の定義に関連する。
SLOを達成することがでクリティカルジャーニーを支えることに繋がると考えられる。
クリティカルユーザージャーニーを定義し、それを元にSLOを定義することで、SLOが信頼性に寄与する度合いを高めることができる。
例1: Eコマースサイトでの購入プロセス
CUJ: 商品をカートに追加してチェックアウトする
SLOの設定:
商品検索・発見
- ページロード時間: 商品検索結果ページのロード時間が2秒以内。
- レコメンドシステムの精度: 関連商品の提案が80%の精度で適切な商品を表示する。
商品詳細確認
- 商品詳細の正確性: 商品ページの情報(価格、レビュー、仕様)が100%正確であること。
- 画像・ビデオの読み込み時間: 商品画像やビデオが1秒以内に表示される。
カートに追加
- カート更新時間: 商品をカートに追加する操作が2秒以内に反映される。
- カート情報の整合性: カートに追加された商品が正確に表示される率が99.9%以上。
チェックアウト
- 決済処理時間: 決済ページの処理が3秒以内に完了する。
- 決済エラー率: 決済処理のエラー率が0.1%以下。
- クーポンコードの適用: クーポンコードの適用がリアルタイムで反映されること。
注文確定
- 注文確認メールの配信: 注文確定から確認メールの配信までが5分以内。
商品受け取り
- 配送時間: 発送から配送完了までの平均時間が3営業日以内。
- 配送エラー率: 配送エラー(遅延、誤配送など)の率が0.5%以下。
信頼性の観点:
ユーザーが購入プロセスをスムーズに完了するために必要な信頼性を確保するために設定される。特に、エラー率や応答時間は信頼性を直接的に示す重要な指標となる。
例2: サブスクリプション型サービスへの登録
CUJ: 音楽ストリーミングサービスに登録し、プレイリストを作成して音楽を聴く
SLOの設定:
ウェブサイト訪問・登録
- ウェブサイトの稼働時間: 99.9%以上の稼働率。
- 登録フォームの応答時間: フォームの送信が2秒以内に処理される。
アプリのダウンロード・インストール
- ダウンロード成功率: ダウンロードおよびインストールの成功率が99.9%以上。
- インストール時間: アプリのインストールが1分以内に完了する。
ログイン・セットアップ
- ログイン成功率: ログイン試行の成功率が99.9%以上。
- プロフィール設定の反映時間: プロフィール設定がリアルタイムで反映される。
音楽の検索・再生
- 検索結果の応答時間: 検索結果が1秒以内に表示される。
- 再生開始時間: 音楽再生の開始が3秒以内に行われる。
- ストリーミングの中断率: 音楽の中断率が0.05%以下。
オフライン再生の設定
- ダウンロードの成功率: 音楽ダウンロードの成功率が99.9%以上。
- オフライン再生のエラー率: オフライン再生時のエラー率が0.1%以下。
信頼性の観点:
ユーザーが登録から音楽再生までのプロセスを問題なく行えることを保証する。特に、インストールやログインの成功率、再生開始の速度が信頼性の重要指標となる。
例3: 銀行アプリでの振込
CUJ: 銀行アプリを使用して、指定口座に振込を行う
SLOの設定:
アプリの起動・ログイン
- ログイン成功率: ログイン試行の成功率が99.9%以上。
- ログイン処理時間: ログイン処理が3秒以内に完了する。
振込先の選択
- 振込先選択の応答時間: 振込先の選択が2秒以内に行われる。
振込金額の入力
- 金額入力の整合性: 入力された金額が正確に処理される率が100%。
確認・承認
- 確認プロセスの応答時間: 振込内容の確認が2秒以内に完了する。
- 承認プロセスのエラー率: 振込承認時のエラー率が0.05%以下。
- ワンタイムパスワードの受信時間: OTPが30秒以内に受信される。
振込完了の通知
- 通知の配信時間: 振込完了後、通知が5分以内に配信される。
信頼性の観点:
SLOは、振込処理の正確性や速度を保証するもので、ユーザーが振込プロセスをトラブルなく完了できるようにする。ログインや振込処理の成功率、通知のタイムリーな配信が信頼性の重要な指標となる。
所感
SLOを考えるときにクリティカルユーザージャーニーを定義する重要性が理解できた。
ユーザーフロー(ユーザーに期待する動作フロー。仕様上の画面遷移。)ではなく、ユーザー体験に基づく整理ができると信頼性の定義をより明確になると感じた。
「なぜこのSLOを定義したのか?」「このSLOはなぜ重要なのか?」という問いに明確な答えを持つことができるため、開発者以外を巻き込んだSLOの設計・運用がしやすくなると思った。
参考